【夜絶景】なんでもない風景が絶景に変身する夜撮影:絞り優先モード編
はじめに
はじめまして。フォトエッセイストの星野佑佳です。
私がメインに撮影しているのは、日本の自然風景と京都の色々。
撮影現場でつい粘ってしまう性格なので、夕景をしつこく撮るうちに、いつのまにか夜の撮影になっていた…ということもしばしばです。
その時、実感するのは「夜の風景は、肉眼で見るより魅力的に写る」ということ。
フィルム時代は一か八かで撮っていた夜の風景が、デジタルカメラではその場で確認、修正ができるので、ますます夜の世界に惹かれていきました。
夜の撮影というと夜景や星の撮影が人気ですが、「なんでもない夜の撮影」もなかなか魅力的です。
さらに、蛍、漁火、雲海、満月などのプラス要素があれば、感動レベルのドラマチックな作品に。名付けて「夜絶景」。
まずは朝夕の撮影のついでに、「夜絶景」を試してみませんか?
準備したいもの
【三脚とレリーズ、バッテリーの予備、黒い紙や布、レーザーポインター、ヘッドライトなど】
夜の撮影はスローシャッターになることが多いので、三脚が必須です。
カメラに触れても構図がずれないよう、なるべくしっかりした三脚が望ましいです。
レリーズもあると万全です。バッテリーも多めに準備しましょう。
空、地上、水面や被写体の明暗差を調整するために、ハーフNDの代わりに使う「黒い紙など」があると重宝します。
ハーフNDを使う場合もありますが、ガラスだと夜は周囲の光を敏感に拾ってしまうリスクも高いため、マットな素材の黒紙や黒布を使うことが多いです。
私はハーフNDの入れ物の固めの黒布を使うことが多いです。(使い方は、次回の後編の作例でお話ししますね)
手元や足元を照らすライトは、明るすぎて周囲に迷惑がかかりそうな場合は、緑色の光のレーザーポインターを半透明のビニール袋で覆って愛用しています。暗いところで手元を照らすには、この位の弱い光がちょうどいいんです。他の撮影者がいる場合の移動で足元を照らすのも、よほど悪路でなければこれで賄えます。
周囲に配慮する必要がない移動時や、セルフライティングをする場合は、ヘッドライトを使っています。
光が遠距離まで届くLEDライトやホワイトバランスを変えられるライトもありますが、ほとんどの場合はヘッドライト(LEDで光量の調節可能・赤色・緑色光もあり)で代用しています。
撮影前の下調べと準備
目的地が決まったら、天気だけでなく月齢や月と太陽の出没時刻と方角も調べておきましょう。月光の有無で、撮り方が変わってきます。
私は、月の出・月の入り時刻方角マップを愛用しています。月の出・月の入り時刻方角マップ
撮影計画を立てる時は、一覧表がみやすい 国立天文台 暦計算室の各地のこよみ が便利です。
また、使い慣れたカメラでも暗いところで操作すると、どこに何のボタンがあるかがわからなくなることがありますので、自宅で事前に目を閉じてカメラの操作ができるかトライしてみてください。
私が使っているカメラは、シャッターボタンを捻ると操作ボタンがほのかに光ってくれるので便利です。(ニコン Z8やD850などについている機能)
撮影方法の切り替え方(絞り優先、マニュアルなど)、ISO感度や露出調整はもちろん、ホワイトバランスの変え方やヒストグラムの確認方法も要チェックです。
周囲が暗いとモニター画面が明るく見えてしまい、適正露出と思って撮った画像が全て暗すぎたという失敗はよくあります。
必ず撮影画面のヒストグラムをチェックして、アンダーになりすぎていないか、注意しながら撮影を進めましょう。
夜の雰囲気を保ちつつ適正露出のヒストグラムは、こんな感じです。

ヒストグラムが左に寄り過ぎていたら、露出アンダーです。

撮影 絞り優先オートで撮る
さあ、いよいよ撮影です。
夜の撮影は、ISO感度、絞り値、露光時間をマニュアルで設定することが多いですが、満月前後の明るい月の光や人工光の影響などで、肉眼でも歩くのに困らないほどの明るさがある場合は、日中の撮影と同じように「絞り優先オート」で撮影してもOKです。
まずは「絞り優先オート」の作例からご紹介したいと思います。
「夜のマニュアル撮影」は次回にお話ししますね。
作例1「十四夜の湖」

■撮影機材:ニコン D800E + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
■撮影環境:f/5 2.5秒 ISO400(⁻1.3 ただし現像時に+補正)
真っ暗闇だと難易度が上がるので、最初は満月前後の明るい夜から慣らしていきましょう。この写真は月が沈む1時間半前に撮影しています。
満月に近く明るい環境だったので、マルチパターン測光で絞り優先オートに設定。
雲間から月が見えたり隠れたりして明るさが変化する場合は、その都度カメラが適正露出値で対応してくれる、絞り優先オート設定の方が便利です。
導入部分で触れましたが、夜はモニター画面が明るく見えてしまうため、実際には露出アンダーなのに画面の印象だけでは適正露出だと勘違いしやすくなります。必ずヒストグラムを確認しながら撮影を進めてください。
また、満月近くは月自体が明るいので、「月をどう写すか?」も意識して決めましょう。クリアな夜空では、月の周りにギザギザの光条が出現したり、風景の被写体側の適正露出を優先すると、月が白飛びしたりすることもあります。
それがダメというわけではなく、例えば「光条がでているから、その力強さを生かすイメージの構図にしよう」「地上の風景に視点が集中するような構図にして、白飛びする月は全体のイメージづくりに添える感じにしよう」など、現状を認識しながら撮ると作品の求心力が高まります。
月が明るいとゴーストやフレアが出てしまうこともあります。
カメラの角度を変えてみてもどうしても発生してしまう場合は、メインの被写体の良い所に被らないように工夫したり、あるいは画像処理での修正を前提にしてゴーストやフレアの位置を調整したりします。
この作例では、雲が多い状況を活かして月の輪郭が白飛びしないよう、薄雲越しのタイミングを狙い、雲が流れ過ぎないシャッター速度で撮りました。
この時は2.5秒でしたが、同じシャッター速度でも流れ方の速い雲ならブレてしまうので、必ず撮影画像で雲の描写を確認しましょう。
雲の流れが速いなら、スローシャッターで滑らかな雲の描写にするのもいいですね。
夜の撮影は、雲が多い天気予報だと撮影に出るのをためらってしまいますが、多少、雲があった方がバリエーションや情感のある作品になるのでお勧めです。
月の撮影は奥が深いので、また機会があればご紹介させてください。
作例2「ネオンに染まる水面」

■撮影機材:ニコン D810 + AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
■撮影環境:f/6.3 2秒 ISO200 (-0.3)

夜景やイルミネーション風景なども、絞り優先オートで撮ることが多いです。
こちらは夜の鴨川。
画面全体で人工光がほぼ均等、岸辺は黒潰れしてもよかったので、ややマイナスに振った絞り優先オートでイメージ通りに写りました。
水面に映る対岸のお店の明かりがとてもカラフルで、夜ならではの光景ですね。
2秒のシャッター速度も川が流れる分、光の色が滲むので、情感をあげてくれました。
水面の表現だけなら、もっとスローシャッターでもよかったのですが、アクセントにしたサギを止めて撮るには2秒が限界でした。
サギが動くとクリアなシルエットにならず、ブレてしまいます。
▼失敗例


失敗例のように背景の水面が透けて見えたり、もし首が動きっぱなしなら、首が写らず消えてしまいます。
「じっとして!」と願いながら、何度もシャッターをきりました。
作例3「町明かりと雲海」

■撮影機材:ニコン Z7 + NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
■撮影環境:f/5.6 30秒 ISO200 (+0.7)
こちらは、雲海と町明かりです。
薄めの雲海(霧)だと町明かりが透けて見えるので、とても幻想的です。
すでに月は沈んでおり、月明かりは無い状況でした。
雲海と町明かりの組み合わせでは、上から注ぐ強い月光で雲海が白く写る状況より、月明かりがない方がきれいに透けて写ります。
車のライトの動きや霧の流れは、動画にすると更に魅力的なので、タイムラプス動画も撮ることにしました。
雲海の有無で変化する露出に対応するため、インターバル撮影のオプション「露出平滑化設定」をオンにして、絞り優先オートで撮影。
この時使ったZ7の、撮影と同時にタイムラプス動画をカメラ内自動作成してくれる機能は重宝します。タイムラプスを作るか否かは、写っている要素に「変化があるか?」で決めています。変化がないと、動画を流しても静止画にしか見えないことがあるので、無駄な努力になってしまいます。
作例4「夜に染まる氷」

■撮影機材:ニコン Z9 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:f/11 20秒 ISO400 (-1.7 現像時に+補正)
日没40分後の撮影です。どんどん薄暮の残光が消えてゆき、代わりに周囲の人工光を拾い始めました。この時間帯は、絞り優先オートでないと変化に追いつけません。
遠方の建物が明るく空は暗いので、一番表現したい氷の部分の適正露出を選ぶため、中央部重点測光にしています。
薄明薄暮のホワイトバランスは、青被りが美しい太陽光が好みですが、この位の時間帯からホワイトバランスが崩れてきて選択が難しくなってきます。
また、人工光の中でも赤色は特に拾いやすいので要注意です。
この作例では、信号の赤色被りと薄暮の青被りの組み合わせが妖しい魅力となってくれました。
作例5「霧の灯」

■撮影機材:ニコン Z8 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:f5.6 1/20秒 ISO400 (-1)
締め括りは、悪天候の日没時刻の作例です。
夜にはなりきっていないのですが、雨霧で視界が遮られて暗く、灯りが霧に滲みます。この灯りひとつで、雰囲気がグッと盛り上がりました。
灯りは、暗くならないと映えません。
闇の暗さと光の明るさ。これが夜絶景の魅力の要なのかもしれません。
さいごに
夜でも絞り優先オートで撮影できる作例をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
絞り優先オート撮影は、昼間の撮影と同じような要領で撮れますが、気をつけたいこともあります。
*適正露出は、ヒストグラムで判断しましょう。
*ホワイトバランスで印象がかなり変わるので、好みに合った選定が必要になります。
RAWで撮影しておけば、現像時に調整可能。
私がよく使うのは、オート、蛍光灯、自分でKB値を決める設定です。(3000~4000KBぐらい)
昼間に使う太陽光モードは黄色がかった色になりやすいので、薄暮、薄明以外はあまり使いません。(今回は「ネオンに染まる水面の人工光」で使用)
*暗くてピント合わせが難しい場合は絞りを開放値にしてみると、明るく見えてわかりやすくなります。
必ずピントを効かせたい所にしっかり合わせましょう。その後で任意の絞り値にします。
ピントはRAW現像でも取り返しがつかないので、確実に合わせましょう。
撮影直後に、画像を拡大表示して、ピントを確認する手間も忘れずに。
*暗い環境ではスローシャッターになることが多いので、三脚やレリーズを使ってブレに配慮しましょう。
ブレも後からでは取り返しがつきません。
機材はしっかりしていても、立地の振動を拾ってブレることもあります。ブレていないか、撮影画像を確認する癖をつけておきましょう。
夜の撮影は、何でもない風景を絶景に変身させるチャンスです。
肉眼以上に魅力的な作品が期待できる夜絶景。ぜひ撮ってみてください。
次回の「夜のマニュアル撮影編」もぜひご覧いただき、夜の状況に合わせてご活用下さいね。
■写真家:星野佑佳
2000年から海外や日本全国を放浪しながら撮影を始め、現在は地元・京都と風景写真がメインのフォトエッセイストとして活動。写真誌等のコンテスト審査員や撮影会、テレビ番組内での風景撮影指導なども行う。フォトエッセイ「もっと、撮り旅」を、雑誌「風景写真」とニコンイメージングジャパンのWEBサイトの2つで連載中。著書に「京の祭と行事365日」(淡交社)や「撮り旅」(風景写真出版)がある。






















