ニコン Z8|3年間使用レビューと、撮影を超効率化する運用方法
はじめに

■撮影環境:ISO250, f5.6, 2.5s
今回は、2023年の発売当初から約3年間使用しているニコンのZ8についてレビューさせていただきます。私は現在、大学生活の傍ら国内外各地で都市風景やストリートフォトをメインに撮影しています。また豪雨や雷、大雪や濃霧といった、いわゆる一般に「悪天候」とされるシチュエーションを追いかけていることもあり、そのようなフィールドでの使用という観点も含めてこのZ8の良さをご紹介していきますので、よろしくお願いいたします。
なぜZ8だったのか
まず、私が19歳だった2023年当時、なぜZ8を選んだのか。
一言で言えば、ブレイクスルーが100%確約されていたからです。
それ以前まで私は、Nikonの一眼レフカメラのなかでもエントリーモデルという位置付けのD5500を約6年間使用していましたが、特に5年目の17歳頃からは撮影の頻度がかなり上がったり、自分なりに撮りたいものが確立されてきたりして、徐々にD5500の限界を感じ始めていた頃でした。
この写真のように、昼間のスナップはできても夜はどうしてもキツイ、などです。

■撮影環境:ISO100, f1.8, 1/500s
またその頃からSNSでの発信を始めたこともあって他のフォトグラファーの作品を見る機会もそれまでに比べて圧倒的に増え、その後進学をきっかけに札幌から上京したりもして、D5500ではかなり厳しいシチュエーションでの撮影にも挑戦したい気持ちが急速に増していきました。
そのタイミングで発表されたのがZ8。
Z9を除けば当時発売されていたZシリーズの他モデルの追随を許さない驚異的なスペックと、他社メーカーと比べれば意外にも届きやすい価格帯 (当時はボディ新品が約53万円)。そして何より、エントリーモデルの一眼レフ機を使用している僕からすれば、自分の創作活動を必ずや飛躍的に拡大させてくれるカメラだと確信しました。
しかし大学生になったばかりの僕は、バイトをしていたとはいえ一括で購入することはさすがにできません。両親にプレゼンして頭を下げ、カメラのキタムラの無金利ローンを組んでもらって無事、発売と同時に手にいれることができたのでした。
撮影を効率化してくれる操作性・機能性

■撮影環境:ISO64, f5.6, 1/1000s
Z8は、Zシリーズの中でも準フラッグシップといえるハイエンド機です。
それゆえ、描写力とか画質とか、そういうのは当たり前に素晴らしいカメラですから、この記事では撮影を効率化してくれる操作性や機能性にフォーカスして、それらを作例とともに僕なりの視点で紹介していきます。
まるで手に吸い付くようなグリップ
慣れましたが、やはり他の人のカメラを持たせてもらうと軽っ!と驚くこともしばしば。
それでもいつも快適に長時間撮影できるのは、手にフィットする深さがあり、そして何より、どのメーカーのものより滑りにくい素材の、グリップのおかげです。

■撮影環境:ISO64, f1.2, 1/1250s
グリップの大きさは、成人男性の標準的な手のサイズであれば非常によくフィットしますし、素材感に関しては他社メーカーを使っている友人知人に触ってもらったときには毎回お墨付きをもらっています。
そのようなグリップのおかげで、撮影するときはぎゅっと力を込めて握りつつ、手で持って運ぶ際にはそこまで力を入れなくて済むというオンオフの切り替えも容易なので、例えば長時間カメラを持ち歩いてスナップ撮影などを行うときなども、思っていたほど手は疲れません。長きにわたって使うカメラという道具ですから、握りやすいというのは本当に重要なポイントです。
4軸チルト

ストリートフォトを撮るときの強力な味方が、4軸チルトで自由自在に稼働するモニターです。
特に「縦構図かつローアングル」で撮りたいときに本領発揮するこの機能は、ZシリーズのなかではZ8とZ9 にしか搭載されていないもの。
通常のチルト式モニターだとこのような展開はできないので姿勢を無理して低くするか、ノールックで構図を決めるしかありませんし、バリアングルであればもちろんできますが展開のスピードはこちらの圧勝です。瞬発的に良いアングルや被写体を見つけて撮影することができ、撮影効率が明らかに上がります。

■撮影環境:ISO250, f1.2, 1/250s
完全無音にできる電子シャッター
Z8には、物理的なシャッター幕がありません。あるのは電子シャッターのみ。それゆえ、シャッターを切ると聞こえるのは「シャッ」という電子音のみ。一眼レフカメラにあるようなシャッターの振動はもちろんありません。
Z8を買うまではレフ機を使用していたこともあり、これに慣れるには数ヶ月かかったのを覚えています。
「味がないな」と思ってしまったのも事実でした。
それでも使っていくうちに振動のないシャッターには慣れますし、何より便利なのが「シャッター音を完全に無音にできる」こと。通常時に出る音は人工的に出している電子音のみであり、それを出さなければ音は生じないからです。

■撮影環境:ISO64, f5.6, 1/800s

■撮影環境:ISO125, f2.0, 1/13s
僕は飛行機の中や展望台といった音に敏感になる場所で撮影することも少なくないため、撮影時に一切の音を出さずに済めばとても快適に撮影が行えます。
音を出しても問題ないシチュエーションで撮影するときは電子音をオンにしていますが、僕は特定のボタンにサイレントモードのON/OFFを切り替えるショートカットを設定しており、指1つで瞬時に切り替えられるようにしています。
圧倒的に信頼できる堅牢性、防塵防滴性能
Z8だけではありませんが、やはりニコンのZシリーズといえばこれでしょう。
3年のあいだに数百回は撮影で使用し、かなりの回数、機械にとって最悪な環境で酷使してきたと思いますが、トラブルや故障に見舞われたことは一切ありません。
こちらの写真は2026年1月、石川県金沢市で一晩中雪が降り続け、約50cmも積雪が増加したときに撮影した1枚。ボディやレンズを保護する行為は一切行わずに吹きさらしの状態で、一晩中使用しました。

■撮影環境:ISO2800, f1.8, 1/250s
日本海側の雪は基本湿った重い雪であり、カメラにとっては本来大敵なはずですが、Z8のボディやそれにつけるレンズも含め、調子が悪くなる素振りすら見せず全く普段通りに動くのを見たときには「Zシリーズを使っていて良かった」と心から実感しました。

■撮影環境:ISO64, f1.2, 1/800s
こちらはスコールが降るマレーシア・ボルネオ島の田舎町で撮影した1枚。
このような大雨のなか長時間撮影してびしょ濡れにしても、不具合が生じたことは一切ないため、強力な信頼を置いています。もちろん撮影後はすぐにしっかり乾燥させる前提です。
先日のアルテミス計画による有人月周回飛行でも話題になりましたが、NASA (アメリカ航空宇宙局) が宇宙で使用するカメラとして、一眼レフカメラの時代から今日のZ9に至るまで、ニコンを選んでいるというのが堅牢性の1つの証拠なのかなと思っています。
暗所をものともしない驚異的なAF性能と被写体検出機能
最後に紹介するのが、AF性能と被写体検出機能について。
Z8のAFは本当に驚異的で、使い始めた当初は「こんな場面でも使えるの!?」と日々驚いたのを覚えています。
例えば、東京からニューヨークへ向かう飛行機から撮ったこの写真は、下に見える街明かりにAFでピントを合わせて撮影しています。もちろんかなり暗い環境で、いけるか否か半々くらいの期待度で試しにやってみるとしっかり合わせてくれたので、マニュアルでピントを合わせる手間いらずで、一瞬たりとも逃したくないオーロラをすぐに撮ることができました。

■撮影環境:ISO16000, f1.8, 1s
また、AFがもし使えずマニュアルでピントを合わせるとなったときには、プレビュー画面をまるで暗視カメラを通しているかのように明るく表示できる「スターライトビュー」という機能があります。
その名の通り、星にピントを合わせるときなんかは便利でよく使っています。(ちなみに星すらもAFでピントが合うことがあります。恐ろしい性能です)

■撮影環境:ISO1600, f1.8, 5s
AF性能と合わせて、被写体検出機能も非常に優秀。これも撮影の効率を上げてくれる機能です。
Z8ではオート、人物、動物、鳥、乗り物、飛行機という6つのオプションから選ぶことができ、基本的に僕は「オート」にしています。

■撮影環境:ISO360, f1.2, 1/160s
上の写真のように、画面に占める被写体の占有面積が非常に小さく、またシルエットであるような場面であっても人の頭部を検出してそこにズバッとピントを合わせてくれることが多いです。
また、かなり暗くても被写体の人物がこちらを向いていれば、顔や瞳を検出して一瞬でピントの追跡を始めてくれるので、夜であってもスナップを撮っていてピントで苦労することは全くといって良いほどありません。
撮影において「ピントを合わせる」という作業は、最も重要でありながらもそれ自体は、シャッターを切って実際に撮るまでは何の生産性もないですから、機械に圧倒的な信頼を置いて全任せできるというのは、撮影の効率を上げるという観点で最高です。
Z8のAF性能のおかげで今までどれだけの撮れ高を得ることができているか、想像しただけでZ8を抱きしめたくなります。よしよし。
Z8の唯一の弱み
3年間使用してきて実感しているZ8の唯一の弱みともいえるのが、バッテリーの持ち。
特に僕は雨や雪が降りしきるなか一晩中撮影をしたりしますが、そのようなデリケートな環境でのバッテリー交換はできるだけしたくないので、「え、もう充電切れるのか…」と思ってしまうこともしばしば。
ですが、巨大なバッテリーを搭載するZ9に匹敵する性能の機械を、他のZシリーズのカメラとも互換性のある小さなバッテリー「EN-EL15c」で動かしているのですから、仕方ありません。
そこで、撮影には合計3個のバッテリー (2個の予備) を持って出かけています。
僕は長いときでは12時間ほどにわたって屋外で撮影をするときもありますが、3つのバッテリーを全て使い果たして撮影できなくなったことは、過去1回しかありません。(それが、先ほど紹介した金沢での豪雪のときです)
したがって、通常の用途であれば予備バッテリーが2個あれば十分かと思いますし、またZ8にはUSB-Cタイプの給電ポートもありますから、モバイルバッテリーから給電しながら撮影も行うことができます。

■撮影環境:ISO64, f5.6, 1s
タイムラプスを撮影するときなどは、基本的にこの給電機能を使ってバッテリーを切らす心配を一切なくした上で臨んでいます。
日々の撮影を超効率化するためのZ8の設定
Z8とZ9では、異なる設定を記憶するための「撮影メニューの管理」という設定があり、AからDまで4つの「撮影メニュー」を切り替えることができます。それぞれの撮影メニューに別の設定を保存しておくことで、よく使う設定を複数、効率よく運用できます。
僕はこの撮影メニューを切り替える機能をボディ背面のFnボタンに割り当てており、特に夜間のスナップなどで静物と動体の撮影を瞬時に切り替えられるのが便利なので、ほぼ毎回の撮影で使用しています。
使用している撮影メニューは主に2つ、たまに3つ目まで使うかなといったところ。
肝心の撮影メニューの中身ですが、1つ目と2つ目は「自動ISO感度の低速限界設定」の違いで分けています。それ以外は全て同じで、スナップの場合、撮影モードはAモード(絞り優先モード)しか使わないので両方Aモードです。
なお、低速限界設定とは「これ以上遅いシャッタースピードが必要になったら、代わりにISO感度を上げてね」という設定です。例えば最低ISO感度が64のカメラで低速限界を1/30秒に設定しておけば、シャッタースピードが1/30秒より遅くならないかわりに、環境が暗くなるにつれてISO感度が64から上がっていくということです。
さて、主に使う2つの撮影メニューについて見ていきます。
1つ目のメニューは動体撮影用の設定。シチュエーションに応じて低速限界設定を1/800秒~1/100秒程度の範囲で設定して、動く人や乗り物を撮るときに使用します。
2つ目は静物撮影用の設定。だいたい僕は低速限界設定を1/20秒~1/4秒程度の範囲に設定しています。
スナップをしながら歩いていると、動かない景色や置いてあるものに心惹かれることがよくあります。そんなとき、特に夕方や夜の暗い時間であれば、動体撮影用の設定のまま撮ると無駄にISO感度が高くなってしまいます。
かといって、静物を撮影するたびにちまちま低速限界設定をいじって、また戻すのも非効率。
そんなときに役立つのが撮影メニューの切り替えです。

■撮影環境:ISO720, f1.2, 1/250s
1つ目のメニューで動く人を撮っていたとき、何気ないその辺の景色も撮りたいと思えば、すぐに静物撮影用のメニューに切り替えて最大限の画質を確保して撮影。その後また良い被写体が歩いてきたら、すぐに動体撮影用のメニューに切り替え。

■撮影環境:ISO64, f1.8, 1/13s
そうすることで、スナップ撮影において超効率的に撮れ高を得ることができるのです。
3つ目の撮影メニューに関しては、今まで紹介した2つのメニューに比べれば使用頻度は落ちますが、Mモード(マニュアルモード)にしており、夜景を撮影する際などに使用しています。

ちなみにマウント横の2つのFnボタンのうちもう1つは、この低速限界設定をすぐにいじれるようISO感度の設定画面に飛ぶように設定しています。
動体と静物を撮る設定を瞬時に切り替える、とは言ったものの、その「動体を撮る設定」「静物を撮る設定」自体を、狙う被写体のスピードや雨雪の降り方、環境の暗さに応じて変えたいときも少なくないためです。

■撮影環境:ISO3600, f2.5, 1/160s

■撮影環境:ISO3200, f1.8, 1/30s
なお、この低速限界設定はスナップだけでなく、飛行機から夜景を空撮するときも多用します。飛行機の高度が上がるにつれて低速限界設定を細かく、だんだんと遅くしていくことで、夜景の点光源をしっかりと止めて写しつつ、なるべくISO感度を低く抑えるということが可能です。
それから、インターバル撮影をしてタイムラプスを作成するときは、低速限界設定を撮影間隔よりも短く設定する必要があります。例えば6秒おきにインターバル撮影を行うときは、低速限界設定は5秒より短く設定しなければなりません。
このよう自動ISO感度の低速限界設定はさまざまな場面で多用する設定のため、マウント横のFnボタンに割り当てるのがおすすめです。
まとめ
ここまで、約3年間にわたって使用してきたZ8のレビューと、僕が現在も使用している撮影を超効率化するための設定を簡単に紹介してきました。
Z8の発売から約3年経ち、Zシリーズには魅力的なカメラが新たに何個も登場してきました。しかし、その間も僕は良い意味で「機材に興味がない」状態で創作活動に集中することができています。
それはひとえに、Z8が2026年現在でも申し分ないスペックを持っている素晴らしいカメラがゆえ。
この記事で詳しく言及はしませんでしたが、不定期で行われるファームウェアアップデートで、Z8にはいまだに新たな機能が追加され続けているのも嬉しいポイント。
少なくとももう3~4年以上は、このZ8とともに歩んでいけるでしょうか。これからもこの相棒とともにどんな世界が見られるのか、とても楽しみです。
■写真家:Nitto
北海道札幌市出身。東京都在住。都市風景やストリートをメインに撮影。
近頃は、気象に対する自らの知識・経験をもとに大雨・豪雪・濃霧・雷などを各地で追い求め、自然の畏怖に相反するかのような美しさを兼ね備える ”悪天候” 下での人々の営みや街並みの表現に熱を注ぐ。東京カメラ部10選U-22 2024















